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「シャワー…浴びる?」 「…えっ!?……」 「だって雨に濡れたからさ。着替え持ってるでしょ?手貸すよ?」 着替えは鞄に入っていた。 でも…… 「…大丈夫…です…クシュン…」 「あははっ。くしゃみしてる。足痛むと思うけど、シャワーゆっくり浴びればいいよ。脱衣場までは、手貸してあげるから」 私のくしゃみに顔をくしゃくしゃにして笑う彼に、なんだか気まずくなりながら、小さく頷いた。 「よし。じゃあ、ゆっくり立ってみようか」 立ち上がり、両手を差し出した彼の手に、戸惑いながらも両手で掴まり、右足を庇って立ち上がる。 彼の左手が滑るように私の腰を支え、右手で私の鞄を拾ってくれる。 「…すみません…」 「ん?大丈夫だよ。暫く誰も帰らないから、安心して?あっ、まだ名前聞いてなかったね?」 「名前…ですか?」
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