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シャワーを浴びてる間、ずっと別れた彼の事を考えていた。 彼の目、彼の言葉、彼の仕草や笑顔が、次から次へと蘇る。 ここでなら…泣いても…いいよね? バスタブに腰かけて熱いシャワーを浴びながら、蘇る記憶と共に溢れ落ちる涙に、もうこれで泣くのはおしまいにしようと決めていた。 さようなら… 言葉にならない…想い… 胸の中を空っぽにしたいのに、捨てる場所が見つからなくて、想いは渦をまいて留まり続ける…いつ、解放されるのだろうか…いつ… シャワーを止めると、立ちこめる湯気の中に、彼が最後に見せた笑顔が浮かんだ。 「…すぐに帰るって言ったのに…」 このまま彼を恨み憎む事が出来たなら、どんなにか楽だろう。 鋭い痛みが右足に走り、体を支えながら体を拭いた。 「ここも早く出なきゃ…」 今夜の寝場所をどこにしようか考えながら、服を着て髪を乾かしていた。
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