―0―

2/2
前へ
/354ページ
次へ
少し冷たい風が、そっと私の頬を撫でる。 ゆっくりと過ぎてゆく時間が、本当にこの胸の傷を癒してくれるのだろうか… いま目の前に揺れるカーテン。 その部屋には似合わない。 「その部屋には…グリーンのカーテンなのに…」 私の言葉を拾ってくれる、あの優しい笑顔は…もういない。 胸の中がざわめいて、景色が滲んでゆく。 溢れ落ちないように… これ以上過去に戻らないように、顔を上げて空に視線を移した。 雲一つない青空が、いまの私と正反対で、その隙間を埋めるかの様に、一筋の涙が頬をつたった。 「もう…戻って来ないのに…」 空に小さな飛行機が、キラキラと輝きながら飛んでゆく。 まるでたくさんの幸せを、運んで行くかの様に…
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加