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「お世話になりました…」
アパートの鍵を不動産屋に返すと、小さな旅行バッグを片手に、私は街を歩き出した。
今までの全てを処分して、私は一体何をしようとしているんだろ…
私に残ったのは、この旅行バッグの中の少しの着替えと、ほんの僅かなお金だけ。
行くあてもなくて、ただ足を前へと動かしているだけ。
「こんな事するような私じゃなかったのに…」
あの部屋も、家具も何もかも、見ていたくなかった。
全てに思い出があるから。
あの人との思い出…
全てを捨てたかった。
そう…私が捨てられた様に…
辺りが少しづつ暗くなっていき、行き交う人々の足取りが、世話しなくなってゆく。
夕飯の買い物に忙しい主婦、学校帰りにお菓子を買っている女子高生、携帯で難しい話をしながら歩くサラリーマン。
何故か私だけ取り残された様な、深い孤独感に襲われていた。
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