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白い雪が舞う、最早廃墟とすら呼べない瓦礫の山と化した街の中……
何処までも深い【漆黒】と、輝かない【金色】が相対していた。
漆黒は主戦派の魔族を束ねる魔王にして、真祖の正当なる血族、【ヴラド・ヴァン・ドラスヴァニア】。
対する金色は、人の戦士の育成機関戦線学園の理事長代理にして、人の保有する戦力の中でも【切り札】に数えられる者達の一人、【リグレット・ベル】。
これは……とある【終わり】の情景だ。
ガクリと膝をつくリグレットをヴラドは深い悲しみを宿らせた瞳で見据え、静かに叫んだ。
「お前達はいつもそうだ……口では愛だ平和だと、耳障りのいい言葉を語ってくれる。
だが、現実はどうだ!?
アレが……あんな奴等が、お前が命を賭けてまで救おうとしたモノなのか!!!?
あんな奴等の為に……アイツは……ミアは殺されたって言うのかよ!!?
だと言うなら……
そんなモノは全部俺が殺してやる。
平和を願った少女を殺す【正義】が何処にある!!!?
どの面を下げて【愛】を語る!!!?
人の想いを……願いを……踏みにじった先の平和に何の意味がある!!!?
……ああ、解ってるぜ?アイツは自分が平和の礎になれるって知ったら、喜んで命差し出すような大バカだ。こんな【終わり】なんか望んじゃいないってな。
だからこそ、俺はお前達が許せない……
その想いを願いを知り、平気で踏み台にした【正義】を許す訳にはいかない。
俺は……
俺が殺した、総ての命に誓い、俺の悪を貫く……!!!!
さぁ、終わらせようぜ??リグレット!!」
それが……
ヴラドが口にした最後の言葉だった。
最早、立つことすら叶わない筈の傷を負い……それでも尚、世界に牙を剥いた男の最後の言葉だった。
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