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【名も無き世界】
神話の時代から今に至るまで……人と魔族が戦いの歴史を積み重ね続けてきた世界。
その世界の片隅で……
リグレットは……今まさに、魔族の王に連なる一人を殺した、ただのちっぽけな少女は、天を仰いでいた。
それは奇しくも、自らが殺した男の見た最後の景色である。
「終わった……のか?」
誰に問いかけるでもなく、リグレットはそう呟いた。
その答えなど、自分が一番知っているハズだとゆうのに……
それでも尚、そんな言葉が零れたのは誰かにその答えを否定して貰いたかったからなのだろう。
そんな自分の弱さにヘドが出る。
ヴラドは自らを【悪】として、思うまま、望むままに【悪】を成した。
そしてヴラドが憎んだ【正義】……彼らもまた、曲がりなりではあるが、自らが【正義】なのだとゆう信念を持って戦ってきた。
それに比べて自分はどうだ?悪にも正義にもなりきれず、ただ卑しく涙を流すだけの自分は一体何だと言うのだろう……
――結局、あのクリスマスの日から【俺】は……【私】は……何一つ進めては居なかったのだ。
誰かを護れる強さを手に入れたハズだった。
誰かの影で泣くだけの自分とは決別したハズだった。
だが、現実はどうだ!?
私はあの日から何一つ進めてなんかいなかった。力を得て誰かを、何かを護れると勘違いしていただけだ。
だから、これはきっと【罰】なのだ――
リグレットはそう想い、黒い血に濡れた自らの身体に目を落とした。
空からは、相変わらず総ての赤も黒も金も塗りつぶしていく白が降り続けている。
この日、人と魔族の過去最大とされる【大戦】が幕を閉じた。
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