日常の終わり

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「二戸神玲(ニトガミアキラ)様ですね……返却日は今日から一週間後になります」 「はい」 俺は店員からDVDとカードを受け取ると足早に店を出た。 店内から出ると顔に光が当たり反射的に空を見上げる。 良い天気だなぁ…… 雲一つない快晴だ。 こんな日は普通なら恋人とデートしたり、友達と出掛けたりするんだろうが…… 考えても仕方ないか。恋人はおろか友達だって居ない、さらにはオタクで自宅警備員(ニート)だし…… ……早く帰ろ。 考えている内に軽く鬱になった。考えるのをやめ口からため息が出るような気持ちで、自宅へと足を進める。 家に帰るとすぐさま薄暗い廊下を越え、自室へ向かい、テレビの電源を点けて借りてきたDVDを再生する。 ちなみに借りたのは、まどかマギカ。 ―― ……しばらく見ているとテレビから『奇跡も魔法もあるんだよ』と言うセリフが聞こえた。 「奇跡に……魔法……か。本当にそんなものがある世界だったら良かったのにな」 自分しか居ない六畳の空間で俺は呟いた。 別に誰かに聞いて欲しかった訳でもなく、ただ考えた事が口をついて出た程度だった。 だが、この呟きこそが始まりだったのだろう。 「魔法のある世界に興味があるのですか」
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