序章~出会い~

2/6
前へ
/38ページ
次へ
丑の刻、人の足途絶えた森は、僅かな霧と暗闇に包まれて風一つ吹かない。 辺りの静けさは幽霊でも出そうな程不気味だった。 「まっこと、…無様よの…」 そんな森の中、沈黙を裂くように声がした。 声の主は妖の類である、妖狐だった。 何があったのか、土の上に横たわる妖狐の周りは血で濡れていた。 そして妖狐自身、大怪我をしているらしく身体を大量の血で染め上げていた。 助けてくれる妖など居る筈もなく、身体から力が抜けていくのを感じているしかなかった。 暗闇の中、妖狐に近付く一つの音が聞こえた。 森に生える葉や草の擦れる音だ。 妖狐は狐耳をピクリと動かし 音のする方に視線を向けた。 そして息を殺して音を立てている主が現れるのを待った。 「妖か…」 現れたのは小さな妖怪だった 弱った妖狐の血肉を狙って現れたのだろう。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加