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「私、えいりあんはんたーになるために、地球を出るアル。」
「は…?」
公園のベンチに腰掛け、彼女は言った。突然の事に現実を受け入れられず、自分はほうけたように立ち尽くす。
「…いつ出発するんでィ?」
「明日アル。」
「明日…。」
頭が真っ白になるとはこういう事か。澄んだソプラノは鼓膜に響くだけで、その意味は頭まで届かない。突き付けられた現実から逃げるように、彼女から目を逸らした。
「…言いたい事はそれだけヨ。」
そんな自分を一瞥し、彼女は立ち上がって去っていこうとする。咄嗟に彼女の手を掴んだ。
「何だヨ?」
「俺との決着はどうすんでさァ。逃げる気かィ?」
やっとの事で絞り出した言葉は、いつものような皮肉で。
(本当に言いたいのはこんな事じゃない。)
気持ちとは裏腹に、顔に浮かぶのはいつもの意地悪い笑顔。それを見て、彼女も同じように皮肉っぽい笑みを浮かべる。
「逃げるんじゃねーヨ馬鹿サド。必ず決着つけに来るから待ってるヨロシ。」
そう言った彼女の笑顔は今までで一番綺麗だったから、見とれて手を離してしまった。
自由になった彼女は振り向かずに何処かへ駆けていく。その背中が見えなくなるのが嫌で、思わず名前を叫んだ 。
「神楽ァ!!!!」
そこで目が覚めた。
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