4人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもと変わらない景色の町を眺めながら、蜂蜜色の頭は欠伸を噛み殺した。お気に入りのアイマスクを装備し、けだるげに足を進める。彼は、真撰組一番隊隊長、沖田総悟。十年経ち、一番隊隊長は板についてきたが、サボり癖は治っていない。やる気の無さも昔と変わらず、今日も土方に書類を押し付けてきた。
「もう吐く息が白いんだねィ。」
自分の口から出ていくそれを見て、総悟は呟く。
(アイツがいなくなったのも、この季節だったなァ。)
思い出した瞬間、胸を刺すような痛みが走る。神楽がいなくなってから続くこの痛みは、この月日の間に、彼の心に大きな傷痕をつくっていた。この傷痕は彼を蝕んで、今にも食い尽くそうとしている。
「今、何処にいるんでィ。」
神楽。
そう呟かれた小さな声は、冬の曇り空に飲まれて消えた。
最初のコメントを投稿しよう!