流れた季節

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いつもと変わらない景色の町を眺めながら、蜂蜜色の頭は欠伸を噛み殺した。お気に入りのアイマスクを装備し、けだるげに足を進める。彼は、真撰組一番隊隊長、沖田総悟。十年経ち、一番隊隊長は板についてきたが、サボり癖は治っていない。やる気の無さも昔と変わらず、今日も土方に書類を押し付けてきた。 「もう吐く息が白いんだねィ。」 自分の口から出ていくそれを見て、総悟は呟く。 (アイツがいなくなったのも、この季節だったなァ。) 思い出した瞬間、胸を刺すような痛みが走る。神楽がいなくなってから続くこの痛みは、この月日の間に、彼の心に大きな傷痕をつくっていた。この傷痕は彼を蝕んで、今にも食い尽くそうとしている。 「今、何処にいるんでィ。」 神楽。 そう呟かれた小さな声は、冬の曇り空に飲まれて消えた。
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