流れた季節

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ガリガリガリ… 不機嫌そうにペンを走らせる男が一人、そこにいた。余程機嫌が悪いのか、灰皿には大量の吸い殻がある。そこにまた一つ吸い殻を落とし、男は溜め息をついた。 「総悟の奴、またサボりやがって!!今日という今日はブッ殺してやる!!」 いきなり怒鳴り声を上げて乱暴に頭をかいた男は、土方十四郎。一通り奇声を上げると、また大量の書類と格闘を始めた。 「トシ、随分叫んでるけど大丈夫か?」 襖を開けて顔を出した近藤に、土方は苦笑いをする。続けて入って来た山崎に湯飲みを手渡され、軽く礼を言った。 「総悟、前よりサボり癖が酷くなったか?」 「ああ、チャイナ娘の事で塞ぎ込んでた時、甘やかし過ぎたからな。」 渋い顔をする土方に、近藤は笑う。事実、神楽が行方不明になって半年程、総悟は仕事そっちのけで神楽を捜していたのだ。しかし消息も、足取りも一切掴めなかった。その結果、総悟は壊れた。
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