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それは一瞬だった。
何処からともなく吹いてきた桃色の風が、神威を沈黙させ、阿伏兎を殺し、総悟とユウを庇うように立ちはだかった。
黒いローブに身を包み、桃色の髪をなびかせる美しい人に、ユウは呟いた。
「お母さん…?」
振り向いた彼女は綺麗に微笑むとまた神威に向き直った。
「あーあ…阿伏死んじゃったよ。」
神威は血を吐きながら、傍らで骸になった阿伏兎を見下ろす。彼の左胸には大穴が空いており、どうやら心臓を握り潰されたらしい。そういう神威も首を折られかけ、重体だった。
「久しぶりだね神楽。お前は本当に天才だったみたい。」
神楽と呼ばれた彼女は、鋭く神威を睨み付ける。彼女の右手は阿伏兎の血で真っ赤に染まっていた。
「ピンチだね…じゃあ今日のところは俺帰るから。」
そういうと、
神威は阿伏兎を担いで呆気なく消え去った。
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