544人が本棚に入れています
本棚に追加
/1697ページ
住宅地の抜けた所で、
並木君の車が短いクラクションを鳴らす。
…わぁ、BMじゃん。
黒いピカピカの車体に、
私の明らかに若作りな服装が歪んだ。
「今日はすごくかわいいですねっ。さあ、どうぞ」
わざわざ助手席のドアを開けに来てくれる。
「…あ、ちょっとかわいくなりすぎちゃったかなー…なんて」
必殺モテ服。
なんてまんま買いすぎちゃったなー。
すけすけシフォンの薄ピンクブラウス。
…とにかく今日はレースが満載。
「いえいえ、かなり似合ってますよ。じゃ、行きましょうか」
にこやかにハンドルを握り、
並木君は言った。
…ってどこの夜景って言ってたっけ?
確か…Rブリッジまで行きましょう、とかなんとか前に言ってたな…舞い上がりすぎて忘れちゃった。
「あ、あの今日ってどこの夜景だったっけ?」
「あっ…しまった…」
「…えっ?」
走り出してすぐ、
並木君が路肩に車を停める。
「…すいません…僕飲み物用意すんの忘れてて…ちょっとそこのコンビニで買ってきますねっ」
私が止めるのもきかず、
外に出て走る並木君…。
飲み物なんていいのに…。
最初のコメントを投稿しよう!