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「…ねーちゃん覗くなってば」
「バッ、バカ、覗いてねーわっ」
麗らかな春の夜。
弟の部屋のドアの隙間、
鼻先を思いっきり挟んだ夜。
「…ここ…置いとくしね…」
母親に頼まれたケーキとジュース。
中からはまた、
アハハッ…やぁだぁーって、
甘ったるい声。
「和子(カズコ)ありがとね」
1階に戻ると油の匂いがする。
「…今日なに?」
「見てのとーり天ぷらー。
あの子も食べてくかしら」
分厚い眼鏡におばさんパーマ。
冴えないこの人に
似ている私…。
「…人ん家の夕飯時にへーきで
上がり込むような子だから、
食べてくんじゃない?」
「またー、あんたはなんでそういう可愛くない言い方すんの?
そんなだから」
「…なにっ?」
「…別にー」
天ぷらに視線を戻す母。
言われなくてもわかってます。
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