変わりゆく、世界

102/103
544人が本棚に入れています
本棚に追加
/1697ページ
「…でさ、それを決行しようと」 タバコの先の長い灰が ガラスの灰皿へ。 そこばかり見てると、 「…聞いてる?」 って阪口さんが言った。 「あ…はい。 でもそんなことして…」 言葉が続かない。 来月の並木たちの復活の日。 それは並木たちがこの会社に挨拶にくる最後の日、であり、 そこからそれぞれ海外駐在社員、となれば、 この会社にずっと勤めていて、 また会う確率はほぼ0に近い。 「…しかもね、噂だと三人とも婚約者連れて来るらしいわよ。 ビックリよね…あんなことしといて」 …婚約者…いたんだ。 何を言われても胸には響かない。 婚約者連れでもなんでも、 目の前から消えてくれるとなりゃ、 それでいーじゃないか…。 「…あの、今日は他の皆さんは?」 私の真向かいに1人座る阪口さん。 「…あぁ。 みんなね、あなたにはもう期待できないんじゃないかって。 被害者は多ければ多いほど力になるって思ってたんだけど…」 なんだ…。 なら阪口さんもそう思ってくれたら良かったのに。 ここにいる時間が、 人生の無駄、のような気がする。
/1697ページ

最初のコメントを投稿しよう!