変わりゆく、世界

103/103
543人が本棚に入れています
本棚に追加
/1697ページ
「…ね、柊さんって夢ある?」 「ゆ…夢ですか?いや…特に」 「…そ。 私にはね、夢があったの。 いわゆる私ら世代の、 カフェをする、とか、 マンションを買う、とかじゃない。 笑わない…?」 「あ…はい、もちろん」 「…私はね…」 初めて好きになった人と、 初めてそういうことをする。 そんな小っぽけで古い夢だから、 あんな男たちにコロッと騙されちゃったのね… そう言って阪口さんは寂しそうに笑った。 …なんだろ… 少し…心に響いたよう…な。 でもダメだ。 理性理性。 「…素敵な夢だと、私思います。 今回のこと…やっぱり協力できませんが、がんばってください」 …そうだ。それでいい。 ペコリと頭を下げ、 ここは私が払うわ って寂しげに微笑む 阪口さんを残して店を出る。 …やりきれない。 でも、私は普通のOLでいたい。 外に出ると雨、で、 珍しく携帯の電話が鳴った。
/1697ページ

最初のコメントを投稿しよう!