lovers 温

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「お客さん、お釣り」 タクシーの運転手にそう言われ、 見上げすぎて痛くなった首を戻す。 …す…すごいとこに住んでんだな。 50階ほどもある高級タワーマンション。 家賃はどれほどか知らないが、 ホテルみたいなフロントには 警備員らしき人影と、 受付っぽいところにも ホテルマンのような人が二人。 自動ドアがブィーン… って開くと、 「おかえりなさいませ」 と丁寧に頭を下げられた。 「あ…あのぉ…私」 怪しいものではありませんって つい言いそうになる。 「本田…」 …なんだっけ?下の名前… 「柊様でございますね。 本田様からこちらにお電話がございまして、伺っております」 ニコッと白い歯を見せられ、 曖昧に頷く。 さすがにホテルではないから、 エレベーターの場所を教えられただけだが、 47階、という階数に辿り着くまで、 違うドキドキで胸が詰まる。 高いとこ…苦手だ。 耳が真空パックされて、 ようやく扉が開く。 そこはワンフロアに4つ。 つまり4個しか部屋がないみたいで、 教えられた温さんの部屋は、 少し奥まったところにあった。
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