lovers 温

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「…ごめん、カズ…」 チャイムを鳴らすと、 温さんはふらつきながらも 鍵を開けてくれた。 顔色は熱のせいで赤く、 目はうつろで…。 「いいよ。 熱は?ごはんは?薬は?」 矢継ぎ早にそう言いながら、 温さんの体を寝室らしきところへ 戻す。 …熱っ… 服の上から触れただけで、 かなりの熱だとわかった。 マンション、とは言うものの かけっこできそうな広さだ。 湾曲した壁の大きな窓からは、 パノラマに都会の夜景が見える。 寝室のベッドに温さんを寝かせ、 何の技術もいらないお粥を作って寝室に運んだ。 「…温さん…少しでも食べれる?」 枕元に行ってそっと囁くと、 温さんは瞼をゆるく開け、 なんとか自力で体を起こした。 「…料理…苦手なんじゃなかったっけ?」 苦しげな息。 それでも少し微笑んで。 「…あのね、 お粥なんて誰が作ってもお粥、だし」 そう言うと、 確かにって言って、 温さんは少しずつお粥を食べた。 …なんか…似てるな。 ふとそう思う。 物質的には何不自由なくて、 …でも、孤独。 室 総司と温さんは、 そういう意味でよく似ていた。
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