lovers 温

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「…お店、連絡した?」 「……うん」 熱は39度近くあって、 これでもマシになったと温さんは言った。 これ以上熱が続くようなら病院に行くと温さんは言って、 ぐったりとした体をベッドに 横たえる。 「…ごめんな…カズ。 なんかカズの顔が浮かんでさ」 「…もう謝んなくていいよ… やっぱり二人でテントに入った方が良かったね」 なんとなくあの空気を、 なんとなく思い出して恥ずかしくなった。 「…あいつ」 リビングでかかりっぱなしの TVの方を見て、 温さんがつぶやく。 「…あいつ?」 「…室 総司。 あいつまだ…あのナイフで事件は起こしてないらしい」 …そういえばそうだ。 交通事故…火事…児童虐待… それらしきNEWSは目にしなかった。 「…真田…見つけられてないのかも」 どんな手を使ってでも逃げ延びる。 それが真田って男のような気がした。 「…カズさ… 俺が言ったこと…覚えてる?」 ふいに話が変わって、 わかってたけどドキドキした。 「…なん…だろ? 色々あって覚えてないかも」 ハハッと笑って頭をかく。 頭でシュミレーションしてみても、想像がつかないとはこの事だった。 幾度となく将来を思い描いても、 私の隣には 太鼓腹のバツイチ子持ち。 吹き出る汗を拭いながら、 『け、結婚を前提に、つ、つきあいますか』 …なんて絵柄しか浮かんでこないんだから…。
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