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肩先で聞こえるスースーという寝息…
…ん…?え…?
温さんは私を抱きしめたまま
嘘みたいに眠っていた。
よっこらしょ…っと体をまた
ベッドに戻し、
その子供みたいな寝顔を見る。
…きっと疲れてたんだね。
不規則な生活で、
ろくにきちんと睡眠も取れてなかったんだろう。
……カズ……
呼ばれてビクッとして、
それが寝言だったと気づき、
フフッと笑った。
………ハヅ……
あいつは…そう呼んだっけ…。
いつまでも違う方向を向いている矢印。
それを動かすにはもう29年も生きてしまった。
……カ…ズ……
もう一度温さんが寝言で言って、
思わず手をさしのべた。
大きな…熱い手…
それを握りしめたまま、
いつの間にか眠りに落ちる。
羊を数える暇もないまま…。
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