lovers 温

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「そうなのかっ…!カズ良かったじゃん! まさかネットからこんなカップルが生まれようとは!」 ラブさんがすっ飛んで来て、ガッチリ両手を握る。 「あ、あのっ…痛いよラブさん。 あはは…ありがと」 苦笑いでラブさんの手をほどき、 総司の方を見ると、 無関心に部屋から出ていく。 バタンッと派手に閉まるドア。 その音に温さんがうっすら 目を開けた。 「……こ…こ……」 「温さん、大丈夫? ここ…わかる…?」 温さんの手が弱々しく私の頬に触れて、ラブさんがニョキッと顔を出す。 「あ…ラブも…?」 「そ。またこのファンキーな世界に来ちまったって訳。 …といってもよー、室ちゃん前と別段変わんねーけど」 「…総司は…?」 温さんが視線を巡らせる。 「…なんか出てっちゃったの。 私たちといるの嫌そーだったし」 「…そか… なんかやたら寒いな…熱のせいかな…」 「…ううん…。今たぶん…」 言いながら重く閉ざされたカーテンを開ける。 室家の木は全て雪景色…。 凍えたように浮く丸い月…。 「…えっ!?雪っ…」 自分で開けといてビックリした。 冬の匂いだ…とは思ったけど、 まさか雪景色…なんて。 「…雪…か。 そういえば前に雪が積もった冬があったな…」 そうだ…。 確かそんな年があった。 突然の大雪。 朝起きたら白い色が眩しくて、 ここで雪合戦したら楽しいだろうなぁ…ってぐらいこんもり積もってた。 結局は雪のせいで電車も遅れ、 ようやく会社にたどり着いた頃には雪を見るのも嫌だったっけ…。
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