lovers 温

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「…雪合戦とか…したいな」 「ははっ…またまた温くん、 君はお熱でしょうに」 ラブさんが茶化した瞬間、 ガタンッとドアに何かぶつかる音がする…。 「…なに…室ちゃん突如暴れだしたとか?」 神妙な面持ちでラブさんが身構え、 見ると温さんも僅かに体を起こしていた。 ガタッ…ガタッ… もう一度小さくコツンと何かが当たる音がして、 静かに、ゆるゆるとドアが開いた。 「…ったく… どいつも気がきかねーな」 廊下の明かりに照らされる、 洗面器…のようなものを持った総司。 慌ててかけよると、 その中にこんもりと積もった雪。 「…なにこれ…?」 「は?雪だよ雪。 氷冷蔵庫に無かったから…」 私に洗面器を渡すと、 首からかけたタオルを取り、 その中に雪を二つかみガバッて入れる。 キュッと巾着型にすると、 目ざとく私の腕からシュシュを外してそこにつけた。 「それ…」 口を出すと睨まれる。 「…結ぶもん他にねーんだから貸せよケチ。だいたいおまえの彼氏の為でしょーが」 温さんの額、 総司の手が、氷巾着をそっとのせた。 「それってどうすんのって訊こうとしただけだよ… それに彼氏って…そう…だけど」 温さんの視線も同時に感じて、 口をもごもごさせる。 「…これから…だよねカズ」 温さんが優しく微笑んで、 それはそれで頷いてしまった。
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