lovers 温

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ビタビタの氷巾着を右手で持ち、 クスクスと笑う温さん。 顔色が少しだけ良くなった気がする。 「…ね、少し下がったんじゃない?」 温さんの手から氷巾着を受けとると、額にそっと手をあてた。 冷たさの中に、じんわりと伝わる熱。 まだ熱はありそうだけど、 あのマンションの時ほど息は荒くない。 「…明日には下がりそうだね」 自然に笑みが出て、 嬉しそうに温さんも頷いた。 「…総司…」 「…ん?室くん?」 「…うん…。俺らに気い効かせてくれたんだな」 窓の下あたりから聞こえる雪を踏む音。 総司に雪を当てられ、ラブさんの ひえっ、とか、ひゃーっ!って声が聞こえた。 …そうなんだ。 「うぬぬ…高校生のくせに生意気な。 温さん病人だし、しかもこんなとこで何もできないっつーのに」 「…でもないと思うよ」 そう言った途端、 温さんの唇が私の唇にやんわりぶつかる… というか2度目…のキス。 「…マンションの続き。 カズに風邪うつしたいな」 温さんが私をギュッと抱きしめて、 スウッと息を吸い込んだ。 「…え…いや、ダメだって温さん寝てなきゃ。 そ、それに…あっ!そうだっ!」 やたらとでかい声をあげ、 温さんから離れる。
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