lovers 温

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2人は静かに聞いていて、 いつの間にか総司は 眠ってる。 …子供みたい…。 すぐそばにある金色の髪。 普通の友達ができて、 すごく嬉しいのになぜか複雑で、 消化しきれないものがまた増えたことにため息が出た。 「…カズ…どうしかした?」 本を閉じたままボウッとしている私に、温さんの声。 「…いや、そのなんていうか… これって成功なのかなって」 「…それは成功なんじゃない? 総司はカズのおかげで族からも抜けたんだし、 何より普通の友達もできた。 カラオケなんて、ある意味健全だよ」 「…そう…だよね」 「そうだよ。 そしてそこから先はカズが心配することじゃない。 カズは今の方の世界の自分と向き合わなきゃ」 …温さんの言うことはいちいち正しいんだとは思う。 「ね、それよかその話の黒うさぎ…だけど、 なんか俺とだぶるな」 「…温さんと?」 「…うん。 で…、白うさぎが、カズ…かな」 「え…それって…」 温さんをさりげなく見ると、 照れたように目をそらした。 「今すぐに…は、 無理かもしんないけど、 いつまでもやれる仕事じゃないし、ホスト辞めようと思ってる」 「…そお…なの?」 「…うん…。 ちゃんとまともな仕事して… そしたら身も心もカズ専属になれるし」 どこかスッキリした横顔で、 温さんはそう言った。 …これって…なんだろ… ずっと私といたいってことなのかな… 本の中の黒うさぎと白うさぎみたいにみんなに祝福されて、 満月の夜に 森の中で結婚式…
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