lovers 温

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温さんのマンションは この日の過去も同じマンションで、 フロントの人が違うことと、 部屋の家具のレイアウトが違うこと、 ぐらいが違うことだった。 「…熱…下がったみたいだな。 明日目が覚めてもそうならいいけど」 温さんが言って、 部屋のものは何でも自由に使っていいからって言った。 「…そうだよね。 目が覚めたら…でも私、元の世界でも温さん家にいるんだ」 「そういえばそうだな。 看病してくれてたんだし」 二人で顔を見合わせてクスッと笑う。 「…カズはなにがいい? なんでもおおせの通りに」 照れたように目をそらして、 温さんが飲み物を訊いてくれる。 「…レモネード…とかできないよね?」 いつか総司が作ってくれた…。 ふと口をついて出る。 「出来るよ。待ってて」 温さんが笑顔と共にキッチンへ消えて、 ぺたんと座ったカーペットの上、 何かが足にあたった。 …ん…なんだろこれ… 画鋲のような… 違うな、ピアスだ。 手のひらで、その片方だけのピアスを転がす。 温さん…のではないな。 ゴールドのハートに、 本物っぽい大きなダイヤ。
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