lovers 温

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…きっと…お客の誰か。 でも仕事がそうなんだし、 焼きもちをやくのもおかしい話、 なんだろうな…。 「…ん…?なにそれ?」 コロコロと飽きずに転がしてると、レモネード片手の温さんが手のひらを覗きこむ。 「…あぁ…懐かしいな」 ただ淡々とそうつぶやいた。 「…お客さんの、とか?」 「…客、というか一時的に付き合ってたというか。 あの頃の俺はただ1番になる為に そんな事もしてた…。 感情がなくても…。…ね。 1番になってからは、客とは一切そんな関係も持たなくなって、 なのにみんな湯水のように金をつぎこんで… …結局は俺は店の商品で、 心なんて…ないのに」 私の手からピアスの片方を取ると、そのままダストBOXに投げる。 何もゴミのないそこで、 それは虚しくカラッと音をたてた。 「…ごめんな。 過去とはいえこんな物見つけさせて」 温さんがそっとレモネードのコップを渡して、 そのじんわりとした温かさに また総司を思い出してる。 「…いや、私別に焼きもちなんかやいてないよ。 気にしないで。 過去は過去、だし」 そう言いながら、 私は総司の過去に嫉妬してた。 葉月ちゃんと総司が出会ったあの土手に、 存在できるはずもない自分、 とか、 総司のクラスの女子とのカラオケ、 とか、 あの電話の相手の山口って 友達、 とか…。 なんでなんで嫉妬するんだ…? 総司の周りに引かれた白線に、 りりぃですら入れてる白線に、 自分が入れてないから…なの?
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