第四章 彼の過去

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それからトイレに行く度彼の背中を借りた。 入院してもうすぐ一か月が経とうとした時 名前も知らない君を知りたくて ちょっと話がしたいと、バルコニーに寄り道をした。 「俺さ、宮谷聆怏(みやたにれお)よろしく」 『うん。』 「あんたは?」 『戸川理央って言うの。』 「理央ちゃんって呼んでいい?」 ちゃん付け嫌だけどまあいいや。 『あーうん。それでいい』 「もしかして嫌?ちゃん付けされんの」 『え?』 思わず否定したが 「顔に嫌って書いてあんじゃん」 ばれた。 『嫌じゃないよ。』 「いいや。俺も、ちゃん付け苦手だし。」 『じゃあ、理央でもいいよ』 「わかった。理央って呼ぶよ。」 「なんかあったら隣の病室に顔出せよ?俺そこにいるから。」 『わかった。』 この日初めて聆怏と会話らしい会話をしたと思う。
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