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ヘルは冷たい眼差しを少年に向けた。
『早く消えなさい。【あの狼】の眷族が近くにいるなんて耐え難い苦痛なのよ』
その言葉に、少年は声を荒げた。
『ふざけるな! お前が身勝手にエクシアけしかけたからこうなったんだろ!!
アイツはちゃんと従ったんだ! お前もちゃんと責任果たせよ!!』
『……立場、解ってないようね』
ヘルが隆志に指を向ける。瞬間、隆志の左胸に氷の破片が突き刺さる。
『グッ!!』
ハイデルを抱えていて避けられずに、氷はそのまま体に埋め込まれた。
今の氷は、間違いなくニブルヘイムの氷だ。
少年は自分の体が砕けてしまうのではないかと恐怖した。
『安心しなさい、すぐには凍らないわ』
ヘルは冷たい眼差しで少年を睨み続ける。
『そこまで言うなら、やってあげるわ。
ただし【雷】と交換よ。それができたらガルムの肉体を用意してあげる。
でも、今から3ヶ月以内に強力な【雷】が手に入らなかったら、氷が一気に冷気を放って内側から体を砕くの。
そしたらそのままこの河に落としてやるわ』
『な……!』
唐突な理不尽極まりない要求に少年は絶句した。
『拒否権は無いわ。
精々必死にもがきなさい』
返答を聞く間も無く、少年の足元に再び魔法陣が展開された。
そして、少年とハイデルはニブルヘイムから姿を消す。
『……さて、どちらになるのかしら?』
ヘルはまるで、パーティーを前にはしゃぐ子供の様に無邪気な笑みを浮かべた。
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