267人が本棚に入れています
本棚に追加
地下鉄の駅から地上に上がったすぐ目の前に片側三車線の道路があって、
そこの横断歩道は青が短かった。そんな気がしてただけかも知らんけど。
学校に通う為にほぼ毎日遅刻ギリギリのデッドラインでそこを渡ってたのが俺と、
1歳年上の彼女で、良く顔を合わせるうちになんとなく話もする様になって、
なんとなく話をする様になったら、好きになるのにそれほど時間も要らなかった。
その日はどういうわけか、彼女と挨拶しながらいつもどおりに歩いてたのに、
地上に出たらもう青信号が点滅してた。それ渡らないと遅刻のタイミングで。
点滅見た俺は0.5秒くらいですっぱり諦めたけど、彼女は諦めなかった。
「うわ、やばっ」みたいな事を小さく叫んでいきなり走り出した。
その場に見捨ててくれても良かったのに、ご丁寧に俺の手まで握って。
前触れも無く、突然生まれて初めて好きな女の子と手を繋いでしまった俺は、
横断歩道を渡りきってからも赤面しっぱなしで、心臓もドキドキしっぱなし。
そんな俺の様子を見た彼女は、人の気も知らずに余裕でニコニコ笑った
「だらしないなぁ、体力無さ過ぎなんじゃないの?」とかなんとか。
で、当時の俺はそれが悔しくて「これは走ったからじゃないです」って言った。
「いきなり好きな人に手握られたからです」って、もう思い出すだけでなんかこう
胸のあたりを掻き毟りたくなるくらい馬鹿正直に。
それが6年前の11/1なもんだから、それ以来、彼女は毎年11/1を2人で
過ごしながら、必ず言うんだよ「あの時は可愛かった」って、笑いながら。
自分は今でも可愛いくせに。
最初のコメントを投稿しよう!