第二章

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どのくらい歩いただろうか。 一向に、街が見えない。人の気配すらしない。 なんだここは。アマゾンか何かか。 木々は鬱蒼と茂っており、木漏れ日が不規則に点を描いて地面を照らす。 この光景にも、ぶっちゃけ飽きた。 しかたないだろう、同じ景色を数時間も見せられたら。 いいかげん、こんなところは早く出たい。 食料には意外と困らず、なにやら怪しい感じがしないでもない木の実などを食べて、空腹を満たしている。 「和君、まだ?」 そう訊ねる日和嬢。俺の背中はすっかり彼女の特等席になっていた。 「ああ、まだだ……な?」 呆然と遠くを見やり、漠然と呟きかけた俺の目に飛び込んだ景色によって、語尾が疑問形になってしまう。 「いや、あれは……塔か?」 林の隙間から僅かに覗くのは、明らかに天然物とは思えない代物が三本。 距離にしておよそ数キロメートル。 塔のような物体の先端が煌めいて見え、光明が差しているように思えた。 「もう少し、かもしれない」 「本当?」 ああ、と返事をする俺の声は、自覚出来る程に軽かった。 「そう。じゃあ、和君タクシー出ぱーつ!」 「よっしゃ、任せろ!」 なんだかワクワクしてきたぞ。 背に日和を乗せた状態で、力強く地を蹴る。 歩く――より明らかに、歩幅は大きい。 「おりゃおりゃーっ!」 「和君はやーい」 まるで、ままごとをする幼稚園児のようなノリだが、気にしてはいけない。 だが、その状態がそう長く続く筈もなく。 「ぜぇ、ぜぇ……はぁ、はぁ……」 息絶え絶えだった。調子に乗り過ぎた。 日和を下ろし、地面に倒れ込む。勿論、仰向けなのだが、ちょうど日和の聖域が目に入り――。 「白」 思わずそう呟いていた。 まあ、あの時の恰好のままなのだから、変わっていないのは当たり前か。 「どう?目の保養になった?」 正直、なっちゃったのだが、ここで頷くのもなんか悔しいので。 「いや、まだまだだな。全然足りん」 なんて事を言ってみた。 「もっと奥が見たいの?じゃあ、ちょっと恥ずかしいけど、見せてあげる」 そう言って日和はスカートの中に手を突っ込み、白い布切れに手を掛け――。 「ごめん。俺が悪かった」 俺に制された。 その先はまずい。色々まずい。 俺だって、そんなものを見せられて我慢出来る程、聖人君子ではない。
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