第二章

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「じゃあ、触って」 「なんの『じゃあ』だ」 見ないなら触れと? 結末は同じな気がする――まさか日和はその気があるのか? 付き合い始めてからエロエロだし。 前まで、そんな事なかったのにな。付き合う事で、自制心が無くなったのだろうか。 いや、そういう事ではなく。 「はいはい。俺全回復。さっさと行くぞ」 ばっと立ち上がり、しゃがみ込む。 「和君のいけず」 「いけずで結構」 「和君の唐変木」 「唐変木で結構」 「和君のすけこまし」 「すけこましで結構……んな訳あるかっ!」 確かに俺は、つれないし、分からず屋かもしれないが、女たらしになった覚えはない。 自慢ではないが、女性遍歴はゼロだ。 とりあえず日和を背中に乗せ(半ば無理矢理)、人の気を目指す。 のだが、なんだろうか、あれだろうか。 あの自称神様は、どうやら俺の事が嫌いらしい。 なんでこうも、足を踏み出した矢先に、こういう事をするかな。 まあ端的に言えば、人が倒れていた。人というか、女の子。それも美少女。 彼女は、仰向けになってへたばっていた。 理由はよく分からないが、憔悴しきっているのだけはよく分かる。 「おい、大丈夫か?」 肩を叩いて呼び掛ける。 息は、ある。心拍も、正常。 気にかけるべきは外傷のみか。 切り傷や擦り傷、その他小さな傷が顔、身体に多数。それぞれはそんなに酷くなさそうだ。 日和を下ろして、この子を背負っていこうかと考えたところで、女の子が目を覚ました。 「あああ貴方は、私が弱りきっている事をいい事に、口では言えないようないかがわしい事をする気ですねっ!?」 ――随分と失礼な娘だった。 「誰がするかっ!」 「へ、どーだか。最近の男は見境がないと聞いてるんですよ!」 「だから、んな事しねぇっての!日和、お前からも何か言ってくれ」 俺だけでは、説得は無理そうだ。 「大丈夫。和君はそんな事出来る程の甲斐性を持ってない」 ……甚だ不本意な言われようだが、どうやら納得してくれたみたいなので、文句は言わない。 って、何気なく話していたから気付かなかったが、日本語喋れるのか。 と、思い返して、すぐ否定する。 多分、あの自称神様がその辺は上手くやってくれたのだろう。 いきなりこんな所に放り込まれて、言葉も通じないとか、洒落にならない。笑えない。
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