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「そーですか。いきなりあんな事を言ってすいませんでした」
ぺこり。
女の子が頭を下げて謝ると、それに連動してふわりと腰まで伸びた髪が柔らかく揺れた。
「いや、別に気にしてないけど」
少し素っ気なくなってしまったが、無理もない。
自慢ではないが、女性遍歴はゼロだ。
「で、君はどうしてこんな所に?」
急な話題転換も、しかたない。
自慢ではないが、女性遍歴はゼロだ。
「アリア」
「は?」
「アリア=フローロレス。私の名前です」
これは呼べという事なのだろうか。
訊くに訊けないので、とりあえず誘導されてみる。
「じゃあ、アリア?どうしてこんな所に?」
「逃げてきました」
――どうやら合っていたみたいだ。
「逃げてきた?何から?」
「悪い人」
なんとも可愛らしい答えで。
まあ、追い掛けてくるような人間に好意は持てないだろうが、にしても悪い人って。
「あっちの方から逃げてきたんですけど、力尽きたみたいです」
その指の差す方向は、俺たちの後ろ。
「そうか。そりゃちょうどいい。すぐそこに街があるみたいなんだ。一緒に行かないか?」
「和君のすけこまし」
「お前は黙ってろ」
不意に話を挟んだ日和を制して、アリアの言葉を待つ。
「いいんですか?では、お願いします――」
着いた先は、そこそこ賑やかな街。
店と思しき家々が、軒並み連ねているから、商業都市か。
店に並ぶ商品をさり気なく確認。
りんご大の果物、100なんとか。読めない。
用途の分からない刃渡り十数センチメートルの刃物1200なんとか。読めない。
まさかのアラビア数字。自称神様に、少しだけ感謝しなければならないだろう。
どうやら物価は、日本と同じくらい。単位は分からないが、数字的に日本円を0.8倍くらいしてやるといいかもしれない。
「なあアリア。あれなんて言うんだ?」
「単位の事ですか、和樹?あれは、ミールですよ」
本当、見慣れない文字だ。
平仮名片仮名漢字でもなければ、ラテン系アルファベットでもない。
むしろ楔型文字とかインダス文字とか言われた方が納得出来る。
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