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まあ、楔型文字でもインダス文字でもないのだろうが、どうせ読めないのだから、気に病む事でもない。
「とりあえず、どこか落ち着ける場所でも探そうか」
俺の言葉に、異論は無かった。
で――何をするにも金は必要だろうという事で、俺たちは住み込みで働ける場所を探し出した。
ちょっとした料理店で、ちょうどファミレスのような所。
必死に頼み込んで雇ってもらい、今に至る。
日和とアリアはフロア、接客。
俺は厨房、皿洗い。
最初は皿洗いからだと思っていたから、そんなに不遇をかこつ事も、感じる事もない。
むしろ、いきなり包丁(驚いた事に、形状が地球のそれと酷似していた)を握れと言われた方が動揺する。俺、料理出来ないし。
というか、日和に接客が勤まるのだろうか。
うん、物凄く心配。
というのは、どうやら俺の杞憂だったようで。
「ご注文承りました。しばらくお待ちください」
割としっかり働いているようだった。
てっきり、「だるい」とか「疲れた」とか言うと思っていたのだが。
ちゃんとやれているなら、それに越した事はない。
アリアはまあ、心配要らないだろう。出来そうだし。
とか思っていると。
「きゃあぁぁあっ!?す、すいません!今すぐ替えの物をご用意致しますので!」
「って、なにいぃぃぃいっ!?」
もーびっくりだ。
普段、しっかりしてそうな雰囲気なので、思わず声に出して驚いてしまう。
これはあれだろうか。ギャップというやつなのだろうか。
日和が意外に出来るし、アリアは意外に出来ない。
そうか、これがギャップ萌――いや、萌えはしないか。
俺の頭の中のメモ帳に、アリアはドジっ娘と記しておく。
「ではごゆっくり」
その間にも、日和はサクサクと仕事をこなしていく。
なんとなくダルそうに見えるのは、多分俺の気の所為。
あんな事があった為、アリアはあえなく清掃係に就任。
店内の掃除をして、時には客を席まで案内する。
店内を歩き回っているようでいて、その実ウエイトレスの機能を果たしていない。
「お疲れ。今日はもう休みな」
「あ、はい。これが終わったらそうします」
もうそんな時間だったか。
雇い主――兼店長のサイカさんは、皿洗いをしていた俺にそう言った。
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