0人が本棚に入れています
本棚に追加
「誉、そっちはどう?」
『んー?・・・いつもとなんらかわんねーべ。』
「そう、よかった。あ、時間はわかる?」
『んー・・・あり?時計がない。』
「ちょっと待ってて。」
現実世界の鏡華がプログラムを組んでいく。
ぽんっと浮かび上がるデジタル時計。
『お~サンキューサンキュー』
コンピュータ世界。
ネットの回線に情報として入り込み、縦横無尽に走れる世界。
と、鏡華のパソコンがピコンっとアイコンを表示した。
「・・・サーチセキュリティ・・・誉、早くバグを流した方がよさそうだよ。」
『何でサーチセキュリティが?』
「・・・これは予想外の自然発生みたい。気を付けて、どこに繋がってるかわかんないよ。」
技術が発展したことにより、意志を持ったバグが生まれた。
バグ世界まであると言われている。
自らの意志で動き、性格も人と同じようにバラバラ。
容姿、能力もそれぞれで異なるとか。
『了解。・・・もう少し潜りたいんだけど・・・行けそうか?』
「バグは一匹だからそう難しくはないかな。」
『10秒で沈めてくれ。』
鏡華がカタカタとパソコンをいじりだす。
「3秒よ。」
タンッとエンターキーを押す。
するとすぐに誉の身体が地面に沈んだ。
正確にはすり抜けた・・・だ。
『お~・・・サンキューサンキ・・・・・・っ!!?』
突然誉が息を呑んだ。
「誉?」
『ウソだろ?』
「何?」
『~っ鏡華!!俺を上げてくれ!早く!!』
さっきと同様に素早くプログラムを打ち込み、一番浅い層へ誉を移動させた。
「誉、何があった?」
秋羅のこえに代わった。
『こりゃあ予想外も予想外だ。4層はバグに侵されてらぁ・・・。』
あたりを見回しながら誉が呆れたように言った。
「バグに?」
『それも相当広かった。ありゃ俺らの世界のモンじゃねぇ。バグ世界のモンだった。』
「4層を住処にしやがったな・・・。まぁ大方、会社のセキュリティが薄かったんだろ。」
『俺のバグはこっから流すわ。』
そう言ってフォンっとバグを出した。
バグと言っても見た目は鹿にプログラムされている。
誉が足が速いのがいいと言ってコンパクトな鹿に設計したのだ。
もちろん何処かの会社のセキュリティに捕まっても、足がつかないようにプログラムは完璧だ。
『行っておいで。』
鹿型バグは、少し走り回ると一気に奥の方に消えて行った。
最初のコメントを投稿しよう!