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いつ見ても大胆不敵だなぁ、こいつ。この状況で腕組みしたり貧乏ゆすりとか、ちょっとタフ過ぎるだろうと思う。
仮にも今は非常事態――ていうか仮でも何でもなく、掛け値なしの緊急事態なのだ。
遊びに来た遊園地の大観覧車が突然停止し、俺たち含む何十人かの乗客は現在進行形でゴンドラの中に閉じ込められている。
翌日の新聞記事や様々なメディアに大体的に報じられていても全くおかしくない規模の出来事だと俺は思うのだ。
それに一時的とはいえ窮屈なゴンドラの中で過ごすのは、乗客にとって大変なストレスとなるだろう。連れがいる手前、何でもない顔をして平然をよそっている男の俺だって、こんな場所に何時間もいたくはない。
なのに同じクラスメイトの女の子――西条朱音(さいじょうあかね)は平然としている。それどころか悪態をついている。
すごい度胸だと思う。普通、こんな事態に陥れば誰であれ多少は取り乱すだろう。女の子であれば尚更だ。
なのに彼女は、ギイと鉄が軋むすごい音がしてゴンドラが大きく横揺れしている間でさえ叫び声ひとつあげなかった。ずっと前を――俺だけを食い入るように見つめていた。
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