鉄の味

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口いっぱいに広がる鉄の味。 俺は暗い鉄と石の空間で目が覚めた。 頭が痛かった。吐き気がして、状況を整理するのにしばらくの時間がかかったが、俺は全てを悟った。 電車のアナウンスの言葉が頭によぎった。電車の中が大きな揺れに襲われ…「ただ今、大変大きな地震が…」 そこでアナウンスが途切れたのを覚えている。 そうだ‥思い出した。トンネルを走る電車は、土砂崩れにより塞がれた出口に突っ込んだんだ。 前方の車両の人は全員死亡しただろう。 俺は全てを思い出し、頭を押さえながら電車を出た。 トンネルの中は寒かった。 辺りを見回すと、奇跡的に生き残った人々が、精気を失った様子で冷たい石の壁に寄りかかっていた。 「大丈夫か?お前も運が良かったな」 壁に寄りかかる1人の男が俺に話しかけた。 20代前半くらいか、しっかりとキマっていたであろう黒のスーツは、今は泥だらけになっていた。 「そうだけど‥君の名前は?」 「名前?さっさとトンネルから出るんだ。言う必要あるか?きっと後ろの出口は土砂崩れはしてないさ」 男はタバコを取り出しながら言った。
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