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ふと時計を見上げると20時を回っていた。 と、同時にリビングの電話が勢いよく鳴り出して一瞬ドキッとする。 セールスだとやたら厄介なので切れるのを待ったが、どうやら切れる気配がない。 仕方なくダルい身体をコタツから引きずり出して冷たい廊下を進む。 「はい。杉本です。」 「あ、沙輝ぃ~?あたし。」 「はぁ、何の用ですか。」 「冷たいなー。それが実の姉に対する態度?」 「はいはい。なんですか、彼氏と駆け落ちして今幸せそうに暮らしている紗英お姉さま。」 「随分と嫌みったらしいわね。」 「私は事実を言っただけじゃない。んで用件は?あなたに構ってるほど暇じゃないんだけど。」 そう、メタルスライムが戦闘シーンに突入したまま私に倒されるのを待っているのだから。 「あんた2年前と随分変わったわね。憎たらしくなった。」 「お陰さまでね。」 「まぁ、いいわ。とりあえずあたしそっちに帰ることにしたから。」 「はぁ、そんな突然どうしたの。健兄ちゃんは?」 「浮気された。だから帰る。」 「それ本当なの?真面目な健兄ちゃんがそんなことするはずないと思うけど。」 「同僚の女の人と一緒に飲み明かしてそのまま泊まり。連絡一切なし。そりゃ怒るでしょ。」 「確認はしたの?」 「2人きりじゃなかったし、酔ってそのまま寝ちゃったから連絡できなかった。ごめんだって。」 「なら許してあげなよ。」 「例え2人じゃなかったとはいえ、泊まったことは事実。」 「会社内の付き合いとかあるんだから仕方ないでしょ。」 「そんなの言い訳よ。」 なんて自己中な女だ。 一度こうなると誰の話にも聞く耳を持たない。 2年前と同じだ。 「悪いけど、私はあなたと暮らすつもりはないから。」 「まだ2年前のこと引きずってんの?何度も謝ったじゃない。」 「そういう問題じゃない。」 「じゃあなによ。」 「あまりにも勝手すぎない?2年前は邪魔だからって私を残して出ていったくせに、行く宛がなくなったらまた帰ってくる?ふざけないで。あたしは許さないよ。」 「ちょっと、だからごめんって。あの時は本当に未熟だった。今は反省してるから。」 「他に何もないなら切るよ。」 「ちょ、沙…プツッ」 一定のリズムで機械音が流れる。 何で今更。 どうして。 手が震えていた。 それが紗英に対しての怒りなのか、自分に対しての慈悲なのかはわからない。 ただ1つわかったのは、何かに対しての虚しさだけだった。 .
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