ひと玉目「鬼の皮を被った羊」

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 どうしようか。こんな時間だから誰も残っちゃいないと思うけど、他の人から見たらコレって委員長が俺を脅してる図にも見えね? いや、『鬼神』を脅す才女ってなっちまったら、委員長可哀想だよな……いくら、今にも俺を殺そうとマフラーを掴む手に力が入ってても、「女のコは大切に」と言う父さんの教えに背く訳にもいかんだろ。  よし。ひとまずアレだ、落ち着くようにうなが……ん? 「セーターの、編み図?」  俺より頭1つ分小さい委員長の向こうに見えた机。その上に広げられた本を見て、つい口から声が漏れた。  どう見てもアレはセーターの編み図、だよな。脇にはどうやら編みかけらしい物体が見えるけど……ありゃお世辞を言うにも言えない。セーターっていうより 「雑巾?」  その単語を呟いた瞬間、俺の首が勢い良く絞まった。  凶器? マフラーに決まってんだろ。 「ちょっ……委員長っ!」  首っ 首がもろ絞まってますっ 鵜飼いの鳥じゃないんだから絞めんでっ!  委員長の腕を叩いて抗議すると、彼女は般若のごとき顔を赤くして、つま先立ち……つまりは背伸びをした。
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