一通目

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でも、先生 なんでよりによって俺にそんな頼み事するんだよ。 自分の左手をゆっくりかざして、ぼんやり見つめる。 昔から、俺の左手には不思議な力があった。 人の1番触れてほしくない部分、 心の傷痕になってしまった場所に触れると その傷が見えてしまう。 人が体験した苦しみを自分のことのように擬似体験するのだ。 これがどうゆうモノなのかもわからなかった俺は小さい頃よくむやみやたらに人の心に入り込んで、考えずに言葉にして気味悪がられた。 『酷いお父さんだね』 『君なんでそんなことしたの?』 『嘘ついてる』 止めたくても原因も、予兆もなく訪れるその発作のようなものに抗えるすべもなくて、だんだん見えても見えないふりをするようになった。 先生にこのことを話してから少しづつ制御もできるようになって、今では触れてもその人の心の扉が見えるだけだ。 俺が触れなければその扉は開くことはない。 もう自ら開くことなどない。 そう決めていたのにー  
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