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あきらめない
「確かに、言葉で世界を変えることは難しいかもしれない。 不可能に近いことだと思う。 でもね、規模を変えれば違うかもね。 個人、あるいは少数だったら、変えることは出来る。 俗にある、感動作で感動するというやつね、卒業はもってこい」
「かんどう……」
「そう、感動して感極まったらさ、犯罪とか起こす気にはならないでしょう」
「それを全世界に広げれば、平和になるんじゃ……」
俺の発言を消し去るように、葉子は首を幾度も横に振った。
「甘い。 私たちの価値観で物事をはからないことね。 価値観は人によって違う、それはアンタも思ったことでしょう。 だから、感動するスピーチでノーベル平和賞を獲ろうが、感動しない人たちもいることだから仕方ないの。 人種、宗教、あらゆることが重なって人は形成されている。 育ちが違えば、言葉なんて通じない。 ましてや、全ての言語を網羅していないのに、世界平和を口に出すなんておこがましい」
葉子は、寂しげだった。
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