おかえり

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ギシリ……ズルリ…ギシリ…… 「おかえり…おかえりぃ……」 行く手はドアで阻まれ、後ろからは U子が迫り、私は 『もう駄目だ……』と思い、 今までの事が走馬灯の様に 頭の中を走りました、 そしてふとU子との習慣を 思い出しました。 (「お姉ちゃんおかえり……!」 「うん、ただいまー!」) 『…ッ!…もしかしたら……』 私はある事を思い付き、 言い放ちました。 「ただいま!U子!!」 ギシリ……キッ……… 途端に床が軋む音とU子の声が 止み、辺りが静かになりました。 『終わったのか……』 そう思い、腰が抜けた私は 振り返りました。 そこには血の足跡などなく、 代わりにU子が付けていた 髪留めと真新しいキーホルダーが 落ちていました。 後日、U子のお葬式の後、 普段からU子と一緒に下校してい たというYちゃんにU子が 事故に遭った日の事を聞きました 、Yちゃんが言うにはU子は 「よる所があるから」と いつもより早めに別れたそうです 。 思えばあの日は私の誕生日の 前日、もしかしたら私への プレゼントにあのキーホルダーを買った 帰りに事故に遭ったのかもしれません。 そして、最期にいつもの 「ただいま」が聞きたくて、 家に帰って来て何度も私に 「おかえり」と囁き続けたのかも しれません。
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