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それは突然の出来事だった。
「眩し…………」
車のライトが目に鋭く突き刺さり、喧しいクラクションが嫌に甲高いブレーキ音と共に耳に響いてくる。
全身を襲う圧迫感に僕は動けなかった。
人は死ぬ瞬間、一体何を考えるのか。一般には印象に残った人生の軌跡が一気に押し寄せるという、走馬灯に陥るらしいが……
僕の場合は若干違うようだ。冷静だし、死ぬ間際なのに、人生とは何ぞやとか考えちゃってるし。
まるで他人事だ。
三流大学を卒業して、中小企業に就職。夢や目標なんてない。ただ首になるのが怖くて慣れない営業の仕事をひたすら頑張った。誠実なところをアピールするしか脳がなかったが、それがよかったのだろう。
顧客から信頼を得て、同期の中で営業成績トップに輝いた。飲み会で職場の皆から祝われたのは本当に嬉しかった。神様からの最後の手向けだったのかもしれないな。
あぁ、そういえばよしゑさんにお礼を言ってなかったなぁ。
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