別れ

4/5
前へ
/323ページ
次へ
小柄で身体の線は細い。しかも二重の大きな瞳に、濡れたように癖のない黒髪。よく女性陣に文句を言われおもちゃにされたものだ。 今まで何度女っぽいとからかわれ、職場でセクシャルハラスメントを受けただろう。物心ついた時からそんなだから、多少は慣れたが…… 人の視線には人一倍敏感になってしまった。首筋にちりちりと寒気のする感覚がしたら要注意だ。背後から誰かが抱きつこうと迫ってきている可能性が高い。 そんな四面楚歌の状況の中、ただ1人、よしゑさんだけは守ってくれた。 空気が読めないだの文句を言われてても、一睨みで全てが解決。どんな人生の修羅場を潜り抜けたらあのような人を射殺す目が生まれるのだろう。職場の空気を見事に凍らせてくれた。 もう感謝、感謝である。例え守られ姫ってあだ名がついても気にならないレベルで。 けど人生最後に思い浮かべるのがよしゑさんとは……正直、虚しい。
/323ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20344人が本棚に入れています
本棚に追加