とある青年と少女の話。

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「……はーみっと……?」 ちいさな口からこぼれた言葉は、その名前は とても懐かしい、響きを持って俺の耳へ届いた。 『おいで、はーみっと!』 『チチッ』 (嗚呼……) これは遠い、昔の記憶…… 「ねえ、しろちゃんははーみっとなの?」 「……」 「また、わたしといっしょにいてくれたの?」 まっすぐな瞳が、こちらをつめて、問いかける。 「理子……いや、リズ」 そっと、彼女の頭をなでる あのときから、ずっとこうしてあげたかった。 「はーみっと……」 もう一度、彼女が名前を呼ぶ。 それに応えるかのように、自分も口を開き彼女の名前を呼ぶのだ。 「リゼッタ」 ずっと、覚えていてくれたんだね。 その日、初めて彼女の瞳から涙がこぼれるのを見た。
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