第一章 分岐点

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色々と物申したいところだが、今更つべこべ言っても合宿の有る無しが変わる訳じゃないから、これ以上は自重。 ただこれだけは言いたい。俺の予想してた補習の斜め上を行った、と。 ――って、ちょっと待て。 「……おい良哉」 「どうかしたか想介?」 呼びかけながら振り向くと、そこには何かを含んだ嫌らしい顔が。体育館から帰る途中で見せた、あの表情だ。 くそ、やられた。 こういうことだったのかよ。 確かに名門校だよなぁ、ここ。 てか、何で知ってたんだ良哉。 特に聞くつもりは無いから前に向き直り、新崎先生の言葉に耳を傾ける。 「取り敢えず、改めて説明すんぞ。けどまぁ詳しくはプリントに印刷してあるし、面倒臭ぇから、それ見て色々騒ぐなり――」 と、そこで新崎先生の動きが停止。 悲しいかな、理由は直ぐに分かった。 だって、プリント……どこにも見当たらないからなぁ。てか、 「色々忘れ過ぎでしょ、先生……!」 二度目だぞ、二度目。 皆が言葉を失う中、職員室に取りに行ったのは、一応副委員長である良哉。HRが終わるの何時になるんだ一体。  ◇ そんなこんなで、もはや30分の大台に突入したHRだったが、新崎先生いわく『プリント見ときゃ、なんとかなるんじゃねーの』の言葉で終了。 忘れ物を取りに行く方が時間かかってんじゃねぇかよ、と言いたくなるぐらいにあっさりしたHRだった。
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