第一章 分岐点

10/29
前へ
/31ページ
次へ
……にしても、 「合宿、か」 放課後。クラスに残すのは数人だけとなった空間で、俺は溜息をついて机の上に視線を落とす。 未だそこにあるのは、合宿の要項。 嫌になるぐらい丁寧に印刷された紙だ。 「そういや、城川君って今日は先生と特訓するのよね?」 前方から声を掛けられ、顔を起こす。 そこにいたのは、茶髪をポニーテールにした女子生徒。彼女こそがB組の委員長、篠沢風雅である。 「えぇっと……確か『二重召喚』だっけか? それ関係のヤツだろ?」 いつの間にか委員長の横に立っていた我が親友は、思い出すように言葉を紡ぐ。 正解だ。俺はこの後、新崎先生に指導をしてもらうことになっている。HRの終わり間際に、新崎先生から言われたのだ。 ちなみに基本的な内容は、二重召喚で呼び出した召喚獣を交えた戦法など色々。 言われてもないし特に聞こうとも思わないのだが、新崎先生がいつになく真剣に教えてくれるようになったのは、恐らく五月のクラス対抗戦の一件があったからだろう。 ここらで、閑話休題。話を戻して、良哉に言葉を返すことにする。 「ああ、悪いけど今日は一緒に帰れないな。えっと……夏休みも特訓に付き合ったりしてくれるよな?」 「もちろん、良いに決まってるぜ」 心強い良哉の言葉に合わせて、委員長と彼女の横で微笑む池永も頷く。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1875人が本棚に入れています
本棚に追加