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「“ウンディーネ”。今回はこいつを召喚してもらおうと思っている」
水の精霊。新崎先生が俺に指示したのは、そう説明されている召喚獣だった。
「ウンディーネ……」と復唱した直後、俺はあることに気付く。
「って、これ中級じゃないですか」
そうなのだ。説明文によれば、ウンディーネは中級に当たる。しかも、サラマンダーやシルフと肩を並べる存在ともある。
また、サラマンダーと言えば伏見の契約召喚獣で、シルフは委員長の契約召喚獣だ。
そんな中級の中でも、そこそこ上位クラスに入ってそうな召喚獣を、俺は使役することができるのだろうか。
「不安か?」
俺の心中を察したのか、新崎先生が尋ねてき、返答を待たずに続ける。
「もしそう思ってんのなら心配すんな。今回は俺が付いてる。それにウンディーネは物分かりが良い。城川なら大丈夫だ」
いつもと打って変わった様子で紡がれたのは、頼もしさや安心感を覚える言葉。
つい数分前とは違う、教師たる姿がそこにはあった。
「で、どうなんだ? 固まってないで何とか言えよ。人間って何が一番辛いと思う? それは無視されることなんだぞ、城川よ」
……ほんの数秒だったけどな。あーあ。
一気に元通りになった先生だったが、その時には俺の中で『断る』という選択肢は消えていた。
不安だけど、やってやる。
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