第一章 分岐点

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そんな思いで取り組んだ特訓。 しかしまぁ……最初にすることと言えば、召喚陣を描くことである。 うわ思いの外、地味だなこれ……! などと不満を積もらせながらも、俺は召喚獣の図鑑を参考にして、黒のペンで床に敷いた紙に召喚陣を描いていく。 中級ということもあり、サイズは中々大きめになる。当たり前だが、書き込む情報もその分多くなるだろう。 何より普通の召喚陣ではなく、二重召喚の召喚陣という所が、それをより多く、難解にしている。 パッと見た感じは、ウンディーネの召喚陣の一回り上に、もう一つの召喚陣……という形になる筈だ。 ちなみに、外側の召喚陣のデザインは固定で、この約三ヶ月の間でしっかり覚えた。 数分かけて描き上げ、中々の出来に「ふぅ」と息をつく。 しかしだ。四月の頃と比べて速度は上がったが、まだまだ。なるべく早く描けるようにしないと、いざって時に困る。 でも今は、 「よし。じゃあ召力を流せ」 指示に頷き、召力を練って右手へ集中、次いで召喚陣の中央に置く。 そして、俺はゆっくりと言を発した。 紡ぐべき単語は、実に簡単である。 ――頼む。 「召喚〈ウンディーネ〉」 直後、召喚陣が異色の光を放ち始めた。 内側が黒。外側が白。普通の召喚術ではありえない発光色を息を呑んで見守る中、ついに“そいつ”が姿を現した。
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