第一章 分岐点

3/29
前へ
/31ページ
次へ
程よく立たせられた栗色の髪型と、首に掛けられたヘッドホンに自然と目が引かれる。また、綺麗な二重瞼と炎のような赤い瞳も彼の特徴と言って良いだろう。 てか、終業式でもヘッドホン装備って。後で校長先生に怒られても知らないぞ……。 「ところで想介、夏休みは何か予定とかあるのか?」 定番と言えば定番の質問。 それを良哉からされた。 「えっと、実家に帰る他には特に何も無いな。……我ながらなんて寂しい夏休み。でもまあ、忙しいよりかマシだよな」 もしもの話で、成績が芳しくない生徒向けの特別補習があったとしても、今の俺には無縁だ。超無縁。 何せ死ぬ気でテスト勉強を頑張ったからな。付け焼き刃程度のメッキと言えど、やれば意外といけるもんだ。 「そっか。でもな想介、忘れちゃいけないと思うぜ? ここはどういう所かってことをな」 「……召喚術の名門校、だよな」 「おう」 だから何だって言うんだ。てか、その何かを含んだ嫌らしい顔はやめて欲しい。 勿体振っているのか? もしそうなら教えてくれよ、と思ったが、ここは気のせいだということにしておこう。 前述した通り、俺の思う『夏休み』は『休暇』なのだ。もちろん召喚術とか剣の自主練は毎日欠かさずやるつもりだが、少しぐらいゴロゴロしちゃって良いじゃない。 ともかく、 「…………暑いな」 「……そうだな、想介」 言っても仕方が無いってことは分かってんだけどな。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1875人が本棚に入れています
本棚に追加