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◇
ともあれ、一年B組。
俺と良哉が教室に入った時には、もう既にほとんどの生徒が帰ってきており、至る所で雑談をしているという状態だった。
うん、いつも通りの光景だ。
そう思いながら、俺は自分の席に座る。
今月の初めに行った席替えで勝ち取った、窓側の列のど真ん中だ。
暑苦しい季節、この席は非常に涼しい。
それだけで充分ラッキーなのだが、この席の利点はそれだけじゃない。
「さぁて、新崎先生、何分遅れてくるかな。オレが思うに10分」
聞いてるこっちが悲しくなるような予想についてのツッコミはまたの機会にしておくとし、何と後ろの席は良哉の席なのだ!
さらに、だ。さらに俺の右隣りは、藍色のセミロングが特徴的な女子生徒――池永葉月(いけながはづき)。
B組の委員長である篠沢風雅(しのさわふうが)の従者だったりする彼女は、とても優しくて礼儀正しい。また、必ず可愛い部類に入るであろうルックス。
「……? どうかしました、城川君?」
「い、いや何でも」
いかんいかん。何がいかんかと言うと、もう全てがいかん。取り敢えず、いかん。
心の中で唱えながら、視線を右から前へと戻し、時計を見る。
HR開始まであと数分といったところか。あの担任、間違いなく遅れるな。良哉の予想が当たらないことを祈っておこう。
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